なでしこ銘柄の選定基準|女性管理職比率だけでは決まらない
なでしこ銘柄は、まず一定の条件を満たしているかを確認するスクリーニングが行われ、その後、女性活躍度調査の回答内容をもとに審査されます。
2025年3月公表分の選定では、2024年8月26日時点で東京証券取引所のプライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場する企業が対象とされ、外国株を含め約3,900社が対象とされていました。
主なスクリーニング基準
2025年版および2026年版の募集要領では、主に次のような条件が設けられています。
- 直近3年平均のROE(自己資本利益率)がマイナスではないこと
- 上場会社単体で女性取締役が1名以上いること
- 調査回答の一定範囲を公表することに同意していること
- 対象となる企業について女性活躍推進法に基づく行動計画を策定していること
- 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」で女性管理職比率を開示していること
- 法令が遵守されていること
- 反社会的勢力とのつながりがないこと
女性活躍の取組だけを見るのではなく、財務面の最低条件や情報開示、ガバナンス、法令遵守なども確認されていることがポイントです。
スクリーニングを通れば自動的に選ばれるわけではない
条件を満たした企業については、「共通調査票」や「なでしこ銘柄調査票」などを用いた審査が行われます。
現在のなでしこ銘柄では、単に制度が何個あるかを競うのではなく、女性活躍推進をなぜ経営戦略に組み込むのか、どのような人材を育成し、どのような成果につなげているのかといった一貫したストーリーも重視されています。
2022年度の制度リニューアル以降、企業の取組数そのものだけではなく、経営戦略と女性活躍推進のつながりが重視されています。
2026年版では業種によって最大3社まで選定可能に
制度の内容は毎年まったく同じではありません。令和7年度の選定では、2025年7月末時点で上場企業数が300社以上の業種について、従来の最大2社から最大3社まで選定できるよう変更されました。
その結果、2026年3月公表分ではなでしこ銘柄26社が選定されています。
なでしこ銘柄のメリットとは?
企業側のメリット
企業にとって大きな意味を持つのは、女性活躍や人的資本経営の取組を、社内だけでなく資本市場や労働市場へ示せることです。
- 女性活躍推進への取組を対外的に示しやすい
- 投資家との対話材料になる
- 採用活動や企業情報発信で活用できる
- 自社の人材戦略を他社と比較・点検するきっかけになる
- 経営戦略と人材戦略を結び付ける契機になる
経済産業省自身も、なでしこ銘柄を中長期の企業価値向上を重視する投資家に紹介することで投資家の関心を高め、企業の取組を加速させることを目的として掲げています。
投資家側のメリット
投資家にとっては、財務諸表だけでは把握しにくい人的資本、ダイバーシティ、経営体制、情報開示などを見るための参考材料になります。
企業が女性管理職や取締役を増やしているかだけではなく、採用から登用までの人材パイプライン、仕事と育児の両立、経営陣の関与などを確認する入口として利用できます。
なでしこ銘柄のデメリット・注意点
なでしこ銘柄そのものに「選ばれたことによる損失」という意味でのデメリットがあるわけではありません。しかし、投資判断に利用する場合には注意点があります。
- 選定=株価上昇保証ではない
- 選定=業績好調保証ではない
- 年度によって選定基準や選定企業が変わる
- 企業が調査へ回答した内容などをもとに審査される
- 財務指標、競争力、割高・割安などは別途確認する必要がある
つまり、「なでしこ銘柄だから買う」という使い方ではなく、企業を評価する複数の材料の一つとして見ることが適切です。
なでしこ銘柄に選定されると株価は上がる?
ここは特に誤解しやすいポイントです。なでしこ銘柄に選定されたからといって、その企業の株価が上昇すると決まっているわけではありません。
経済産業省の令和7年度レポートでは、過去に選定された企業群について株価指数をTOPIXと比較すると、なでしこ銘柄選定企業群の株価指数平均がTOPIXより高い傾向を示したと報告されています。
また、令和6年度のレポートでも、2025年に選ばれた23社について過去10年間の株価推移を試算すると、一定期間でTOPIXを上回る傾向が示されています。
「選ばれたから上がった」とは証明されていない
ここで注意したいのは、これらのデータが「なでしこ銘柄に選定されたことが原因で株価が上昇した」と証明するものではないことです。
企業の株価は、利益成長、金利、為替、市場環境、業界動向、配当、M&A、将来見通しなど非常に多くの要因によって変動します。
また、なでしこ銘柄ではROEなど一定の財務条件もスクリーニングに含まれています。そのため、過去の株価パフォーマンスと女性活躍推進の関係を見る際には、もともとの企業競争力など複数の要因を切り分けて考える必要があります。
発表直後の値上がりを狙う制度ではない
東京証券取引所は、なでしこ銘柄を含むテーマ銘柄について、株式投資を考える「一つのきっかけや関心材料」として公表しています。
そのため、短期間の値上がりを保証したり、特定企業への投資を推奨したりする仕組みではありません。
なでしこ銘柄を投資判断に使うときの見方
なでしこ銘柄を投資の参考にするときは、選定の有無だけではなく、次の項目も併せて確認すると企業の実態を把握しやすくなります。
- 売上高や営業利益は成長しているか
- ROEや営業利益率はどう推移しているか
- 自己資本や有利子負債の状況は健全か
- 株価指標のPER・PBRは過去や同業他社と比べてどうか
- 女性管理職比率が継続的に改善しているか
- 女性取締役が社外取締役だけでなく社内でも育っているか
- 男女間賃金差異や育児休業などの情報開示が充実しているか
- 人的資本戦略が実際の事業戦略と結び付いているか
なでしこ銘柄は「買うべき株のランキング」ではありません。企業研究を深めるための入口として利用するのが基本です。
さらに混同されやすいのが「プラチナなでしこ」という言葉です。実は経済産業省・東証の公式な区分にはその名称はなく、別制度の「プラチナえるぼし」と混同されている可能性があります。ESG投資との関係も含め、次ページで違いを整理します。




