PCFRは、株価が企業の「キャッシュを生み出す力」に対して何倍まで評価されているかを見る株価指標です。PERやPBRほど頻繁に目にする指標ではありませんが、減価償却費の大きい製造業や設備産業などを比較するときには、PERだけでは見えにくい企業の評価を確認する手掛かりになります。一方、「PCFRは何倍なら割安なのか」「低ければ必ず買いなのか」「営業キャッシュフローを使えばよいのか」など、判断を誤りやすいポイントもあります。本記事では2026年8月28日時点で野村證券、SMBC日興証券、大和証券、日本取引所グループ、企業会計基準委員会、マネックス証券などの公開情報を確認し、PCFRの意味、計算式、PERとの違い、適正値の考え方、低い場合の意味、銘柄スクリーニングや実践的な活用法までわかりやすく解説します。

この記事でわかること
- PCFRとは株式で何を意味する指標なのか
- PCFRの正しい計算式と計算例
- PCFRで使われる「キャッシュフロー」の注意点
- PCFRとPERの違い
- PCFRの適正値・目安は何倍なのか
- PCFRが低い銘柄は本当に割安なのか
- PCFRが高くなりやすい企業・低くなりやすい企業
- PCFRを使った銘柄スクリーニング方法
- PCFRと営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローの違い
- PCFRを実際の企業分析で活用するときの注意点
情報確認日:2026年8月28日
PCFRの算出方法は金融情報サービスや証券会社によって使用する利益、減価償却費、株式数などの定義が異なる場合があります。異なるサイトの数値を比較する場合は算出方法も確認してください。
PCFRとは?株式の「キャッシュ創出力」と株価を比べる指標
PCFRとは「Price Cash Flow Ratio」の略で、日本語では「株価キャッシュフロー倍率」と呼ばれます。
企業が1株当たりどれくらいのキャッシュフローを生み出しているかに対して、現在の株価が何倍になっているかを見る指標です。
野村證券、大和証券、SMBC日興証券はいずれも、PCFRを「株価を1株当たりキャッシュフローで割ったもの」と説明しています。
基本的な考え方はPERとよく似ています。
- PER:株価を1株当たり利益と比較する
- PCFR:株価を1株当たりキャッシュフローと比較する
つまりPCFRは、会計上の利益だけではなく、企業が生み出すキャッシュに着目して株価水準を見るための指標です。
PCFRの計算式|まずは基本を理解しよう
PCFRの基本的な計算式は次のとおりです。
PCFR(倍)=株価 ÷ 1株当たりキャッシュフロー(CFPS)
時価総額を使えば、考え方として次のようにも表現できます。
PCFR(倍)=時価総額 ÷ キャッシュフロー
たとえば株価が1,500円、1株当たりキャッシュフローが150円なら、
1,500円 ÷ 150円 = 10倍
となり、この企業のPCFRは10倍です。
1株当たりキャッシュフローはどう計算する?
国内の証券会社などがPCFRを説明する際には、簡便的に次の計算を用いる例が一般的です。
キャッシュフロー = 当期純利益 + 減価償却費
さらに、
1株当たりキャッシュフロー =(当期純利益 + 減価償却費)÷ 株式数
と考えます。
たとえば次の企業を想定してみましょう。
- 株価:2,000円
- 当期純利益:80億円
- 減価償却費:40億円
- 計算に使用する株式数:1億株
簡便的なキャッシュフローは、
80億円+40億円=120億円
です。
1株当たりでは、
120億円÷1億株=120円
となります。
したがってPCFRは、
2,000円÷120円=約16.7倍
です。
重要|PCFRの「キャッシュフロー」と営業キャッシュフローは必ずしも同じではない
PCFRを理解するうえで最も注意したいポイントの一つです。
野村證券やSMBC日興証券などの国内金融機関の用語解説では、PCFRで使用するキャッシュフローを「当期純利益+減価償却費」として説明しています。
これは企業のキャッシュ創出力を簡便的に把握するための考え方です。
一方、企業が開示するキャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」とは同じ数字になるとは限りません。
企業会計基準では、キャッシュ・フロー計算書を大きく次の3区分に分けます。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー:主たる営業活動などから得た・使用した資金
- 投資活動によるキャッシュ・フロー:設備や有価証券などの取得・売却に関する資金
- 財務活動によるキャッシュ・フロー:借入、返済、株式発行など資金調達に関する資金
営業キャッシュフローには、売掛金・買掛金・棚卸資産など運転資本の変化をはじめとするさまざまな項目も反映されます。
そのため、
「当期純利益+減価償却費」=「営業キャッシュフロー」
とは限りません。
情報サイトによってPCFRの数字が違うことがある理由
PCFRの数字を確認すると、同じ企業・同じ時期でも情報提供会社によって少し異なる場合があります。
主な理由として考えられるのは次の違いです。
- 当期実績と会社予想のどちらを使用しているか
- 減価償却費の範囲
- 営業キャッシュフローを利用するか簡便的なキャッシュフローを利用するか
- 期末株式数と期中平均株式数の違い
- 自己株式をどのように扱うか
- 使用する株価の時点
PCFRを比較する場合は、できる限り同じ情報提供元・同じ計算方法の数字を使うことが重要です。
PCFRで最も間違いやすいのが「○倍以下なら割安」という見方です。実際には、すべての銘柄に共通する適正値はありません。その理由とPERとの違いを次ページで詳しく解説します。




