PCFRとPERの違い|どちらも株価倍率だが分母が違う
PCFRと非常によく似ている株価指標がPER(株価収益率)です。
日本取引所グループではPERを、株価を1株当たり当期純利益で割った指標と説明しています。
PER(倍)=株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PCFRとの最大の違いは分母です。
| 項目 | PCFR | PER |
|---|---|---|
| 正式名称 | 株価キャッシュフロー倍率 | 株価収益率 |
| 分母 | 1株当たりキャッシュフロー | 1株当たり利益 |
| 主に見るもの | キャッシュ創出力に対する株価水準 | 利益に対する株価水準 |
| 減価償却費 | 簡便式では純利益へ足し戻す | 費用として利益を押し下げる |
設備投資の大きい会社ではPERとPCFRに差が出やすい
機械、鉄道、通信、半導体製造など、大規模な設備を使用する事業では減価償却費が大きくなる場合があります。
減価償却費は会計上の費用なので利益を減少させますが、減価償却費を計上したその時点で同額の現金が流出するわけではありません。
PCFRの簡便式では減価償却費を純利益へ足し戻すため、減価償却費の大きい会社では、PERだけを見た場合とは評価が変わることがあります。
PCFRならPERより正しいという意味ではない
ここは重要です。
PCFRがキャッシュに注目しているからといって、PERより常に優れた指標という意味ではありません。
利益には企業活動について重要な情報が含まれています。また、PCFRの簡便式で減価償却費を足し戻しても、設備を維持・更新するためには将来現金支出が必要になる場合があります。
そのため、PCFRだけでなく、PER、PBR、ROE、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、負債などを併せて見ることが重要です。
PCFRの目安・適正値は何倍?
「PCFR○倍以下なら割安」というすべての企業に共通する公式な適正値はありません。
PCFRはPERと同様、同業他社、市場平均、その企業自身の過去の水準などと比較して使用する相対評価指標です。
野村證券はPCFRについて、株式市場平均や同業他社などと比較して割高・割安の判断に利用すると説明しています。
SMBC日興証券も、PCFRは低いほど割安とされる一方、業種によって設備投資額などが異なるため同業他社との比較が重要としています。
「PCFR10倍以下なら割安」と一律に判断しない
インターネット上では「PCFRは10倍程度が目安」などの表現を目にする場合がありますが、すべての上場企業に当てはまる公的・統一的な基準ではありません。
たとえば、
- 設備を大量に保有する製造業
- 設備をほとんど必要としないIT企業
- 成長率が高い企業
- 成熟企業
- 景気変動の大きい企業
では、投資家が許容するPCFRの水準が異なり得ます。
したがって「5倍なら買い、20倍なら売り」といった機械的な判断は適切ではありません。
PCFRが低い意味|割安の可能性と「低い理由」の両方を見る
計算上、PCFRが低いということは、1株当たりキャッシュフローに対して株価が低いことを意味します。
他の条件が同じなら、PCFRが低い企業は高い企業より株価が相対的に割安と評価されることがあります。
しかし、低PCFRだから必ず投資価値が高いという意味ではありません。
PCFRが低くなる4つの代表的なケース
1.株価そのものが下落している
PCFRの分子は株価です。業績悪化への懸念などから株価が大幅に下落すれば、PCFRは低くなります。
将来のキャッシュフローが悪化すると市場が予想しているために低PCFRとなっている可能性もあります。
2.減価償却費が大きい
簡便的なPCFRでは純利益へ減価償却費を足します。
大規模設備を保有する会社では減価償却費が大きく、計算上のキャッシュフローが増えるため、PCFRが低くなることがあります。
3.一時的に利益・キャッシュフローが大きい
PCFRの計算に使用している利益などが一時的に高い場合、PCFRが通常より低く見えることがあります。
翌期以降も同じキャッシュ創出力が続くのか確認が必要です。
4.将来の大型投資が必要
PCFRの簡便式では減価償却費を足し戻しますが、実際には工場、設備、通信インフラなどを維持するための設備投資が必要です。
キャッシュフローが大きく見えても、多額の設備投資が継続的に必要であれば、株主が自由に使える資金が同じだけ残るわけではありません。
PCFRが高い意味|必ずしも割高とは限らない
PCFRが高い場合は、現在のキャッシュフローに比べて株価が高く評価されている状態です。
一般的には割高と判断する材料になりますが、高PCFRには合理的な理由があることもあります。
たとえば市場が、
- 将来の高い利益成長を期待している
- キャッシュフローの急成長を期待している
- 競争力やブランド力を高く評価している
- 現在は先行投資段階だが将来回収できると判断している
場合には、PCFRが高くなることがあります。
したがって、PCFRが高いという理由だけで「株価が必ず下がる」と判断することもできません。
PCFRの比較で最も重要なのは「同業種」
PCFRは業種ごとに特徴が大きく異なります。
特に減価償却費や設備投資額の違いが影響するため、業種をまたいで単純比較すると判断を誤る場合があります。
たとえば大規模な工場を持つ製造会社と、物理的な設備をあまり必要としないソフトウェア会社では、減価償却費の構造が大きく異なります。
PCFRを比較する基本的な順番は、
- 同業他社との比較
- その企業自身の過去水準との比較
- 同じ業種の平均との比較
- 他の株価指標との比較
とすると理解しやすくなります。
PCFRの本当の価値は、単に低い銘柄を並べることではありません。低PCFRにPER・ROE・営業キャッシュフローなどを組み合わせることで、数字の裏側が見えてきます。実践的な使い方を次ページで解説します。





