PSR 1倍割れとは?時価総額が年間売上高を下回る状態
PSR1倍割れとは、基本的に時価総額が年間売上高を下回っている状態です。
例えば、
- 年間売上高:1,000億円
- 時価総額:700億円
なら、
700億円 ÷ 1,000億円=PSR0.7倍
となります。
「会社が年間1,000億円売り上げているのに時価総額は700億円なのだから割安では?」と思うかもしれません。しかし、ここでは売上高と利益を混同しないことが重要です。
売上高1,000億円でも利益が多いとは限らない
売上高からは、仕入費用、人件費、研究開発費、広告費、減価償却費などさまざまな費用が差し引かれます。
年間売上高が1,000億円あっても、費用が大きければ利益はわずかかもしれません。赤字になる可能性もあります。
つまりPSR1倍割れが示しているのは、「年間売上高より時価総額が小さい」という計算上の関係であり、「本来の企業価値より安い」と保証するものではありません。
PSR PER PBR 違い|3つの指標を一気に理解
PSR、PER、PBRはいずれも株価評価に利用されますが、比較する対象が違います。
| 指標 | 日本語 | 基本的な計算式 | 主に見るもの |
|---|---|---|---|
| PSR | 株価売上高倍率 | 時価総額÷売上高 | 売上高に対する株価評価 |
| PER | 株価収益率 | 株価÷1株当たり利益 | 利益に対する株価評価 |
| PBR | 株価純資産倍率 | 株価÷1株当たり純資産 | 純資産に対する株価評価 |
PERは「利益」が基準
日本取引所グループはPERについて、株価を1株当たり当期純利益で除した指標であり、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示すものと説明しています。
利益が十分に出ている会社なら使いやすい一方、当期純利益が赤字の会社では通常の意味でPERを使った割高・割安比較ができません。
PBRは「純資産」が基準
PBRは株価を1株当たり純資産で割って計算します。
日本取引所グループは、PERが株価と利益という「フロー」との関係を見るのに対し、PBRは株価と株主資本という「ストック」との関係を見る指標と説明しています。
PSRは「売上高」が基準
PSRでは利益ではなく売上高を使うため、売上高を計上していれば赤字企業でも計算することができます。
この性質が、利益がまだ安定していない新興企業やグロース株の比較でPSRが使われる理由の一つです。
PSRとPBRの「1倍割れ」は意味がまったく違う
PSR1倍割れとPBR1倍割れは、どちらも「1倍」という数字が出てきますが、意味は異なります。
- PSR1倍:時価総額と年間売上高が同額
- PBR1倍:株価と1株当たり純資産が同水準
したがって、PSR1倍割れを「純資産より時価総額が低い状態」と理解するのは誤りです。
PSRと利益率には深い関係がある
PSRを正しく理解するうえで、非常に役立つ関係式があります。
同じ期間・同じ利益基準を用いる場合、次の関係が成立します。
PSR = PER × 純利益率
なぜなら、
PER=時価総額÷純利益
純利益率=純利益÷売上高
なので、両者を掛けると、
(時価総額÷純利益)×(純利益÷売上高)=時価総額÷売上高=PSR
となるからです。
この関係からも、PSRだけでは利益率を無視して企業同士を比較できないことがわかります。
なお、予想PERと実績売上高のように計算期間が異なる数値を組み合わせた場合には、この関係をそのまま当てはめることはできません。
PSR グロース株での使い方|赤字企業でも比較できる
PSRは、特に成長途中のグロース企業の分析で利用されることがあります。
成長企業では、新商品の開発、人材採用、研究開発、広告、販売網の拡大などへ資金を積極的に投入するため、売上高は急成長していても利益が小さい、あるいは赤字になっている場合があります。
赤字企業は通常のPERで比較できません。一方PSRなら、売上高があれば倍率を計算できます。
FidelityもPrice-to-Sales Ratioについて、利益やキャッシュフローがマイナスの企業を評価する場合に利用できる指標の一つとして説明しています。
PSRが高いグロース株は必ず割高?
必ずしもそうとは限りません。
高い売上成長や高利益率が将来期待されている企業では、現在の売上高に対して高い時価総額が付くことでPSRも高くなる場合があります。
一方、期待どおりの成長を実現できなければ、市場の評価が変化して株価が大きく変動する可能性があります。
そのためグロース株では、PSRと同時に次の項目を見ることが大切です。
- 売上高成長率
- 粗利益率
- 営業利益率
- 赤字額の推移
- 営業キャッシュフロー
- 現金・預金
- 有利子負債
- 会社の業績予想
PSRが高い理由|「人気だから」だけではない
PSRの計算式は「時価総額÷売上高」です。そのため直接的には、売上高に対して時価総額が大きいほどPSRは高くなります。
その背景には、次のような要因が考えられます。
- 高い売上高成長が期待されている
- 将来の利益率向上が期待されている
- 現在すでに高い利益率を実現している
- 将来の事業規模拡大への期待が大きい
- 株価上昇によって時価総額が増加している
Damodaran教授の企業評価資料でも、Price/Salesは利益率、成長率、リスクなどの影響を受けることが示されています。
つまり、高PSRには理由がある可能性がある一方、高いPSRそのものが将来の成長を保証するわけではありません。
PSRが低い順に並べるだけでは、業績悪化企業まで候補に入ってしまいます。本当に確認すべきスクリーニング条件を次のページで具体的に整理します。



