TOBの成立条件とは?「応募すれば必ず売れる」とは限らない
TOBの成立条件は案件ごとに異なります。特に重要なのが「買付予定数の下限」と「買付予定数の上限」です。
買付予定数の下限
「最低でも○株の応募が必要」と下限が設定されているTOBでは、応募株数がその下限に届かなかった場合、公開買付者が応募株式を買い付けない条件となっていることがあります。
たとえば、経営支配権の取得を目的としているにもかかわらず十分な株式が集まらなければ、買収目的を達成できません。そのため一定の下限を設けるケースがあります。
買付予定数の上限
支配権の完全取得ではなく一定割合までの取得を目的とするTOBでは、上限が設定されることがあります。この場合、上限を超える応募が集まれば、法令・公開買付条件に従い一部のみが買い付けられる場合があります。
一方、公開買付け後の株券等所有割合が3分の2以上となる一定の場合には、少数株主に売れ残り株が生じることを防ぐため、原則として応募株式の全部を買い付ける「全部買付義務」があります。
TOB期間は原則20~60営業日
公開買付期間は、原則として20営業日以上60営業日以内の範囲で設定されます。ただし、訂正届出書の提出や競合する公開買付けなど一定の場合には延長されることがあります。また、2026年の制度改正では、一定の規制について個別案件ごとに当局の承認を得ることで例外的な取扱いを可能とする仕組みも整備されています。
TOB応募の手続き|何をすればいい?
株を持っている証券会社から、そのままどのTOBにも応募できるとは限りません。公開買付けでは通常、案件ごとに「公開買付代理人」となる証券会社などが指定されています。
一般的な応募手続きは5ステップ
- 1.公開買付代理人を確認する
公開買付届出書、公開買付説明書、対象会社の開示資料などで確認します。 - 2.必要なら公開買付代理人の証券口座を開設する
口座を持っていない場合、新規口座開設が必要となるケースがあります。 - 3.対象株を公開買付代理人へ移管する
現在ほかの証券会社で保有している場合、株式の口座振替が必要になることがあります。 - 4.公開買付説明書を確認して応募する
買付価格、期間、下限・上限、決済日などを確認したうえで申込みます。 - 5.TOB結果と受渡しを確認する
成立後、買い付けられた株式について公開買付価格に基づく売却代金が決済されます。
株式移管は早めに始める
公開買付代理人と現在利用している証券会社が異なる場合、最も注意したいのが株式移管です。口座開設や移管には日数がかかる場合があります。証券会社によっては、株式の移管に10営業日程度かかる可能性があると案内しています。
公開買付期間の最終日=移管手続きを始めてよい最終日ではありません。各証券会社には独自の受付締切があるため、応募する方針を決めた場合は早めに公開買付代理人へ確認することが大切です。
TOBの応募は期間中なら取消しできる場合がある
主要証券会社では、公開買付期間中の所定の受付時間内であれば応募申込みの取消しが可能と案内されています。ただし、受付最終時刻は証券会社や案件によって異なるため、公開買付説明書と代理人の案内を必ず確認してください。
TOBに応募するのと市場で売るのは何が違う?
TOB期間中も上場が維持されていれば、市場で売却できる場合があります。そのため株主には、大きく「TOBに応募する」「市場で売却する」「そのまま保有する」という選択肢があります。
市場価格がTOB価格に非常に近い場合、市場売却ならTOBの決済日を待たずに売却できる一方、売買手数料などの条件は証券会社によって異なります。TOBに応募する場合も、口座移管の費用や税務上の口座区分を確認する必要があります。
また、非公開化を目的とするTOBで応募せずに残った場合、TOB成立後のスクイーズアウト手続きにより最終的に金銭が交付されるケースがあります。ただし、手続きや時期は案件によって異なるため、「応募しなくても必ず同じ時期・同じ方法で現金化される」と考えるのは適切ではありません。
TOBで「買い増し」が行われる理由とは?
公開買付者が株式を買い増す主な理由
企業や投資ファンドがTOBによって株式を買い増す目的はさまざまです。代表的なのは、経営支配権の取得、連結子会社化、完全子会社化、非公開化、グループ再編、事業上の連携強化などです。
単に投資収益を得る目的ではなく、「議決権を増やして経営への関与を強めたい」「少数株主を含めた資本関係を整理したい」といった経営上の理由で取得割合を高める場合もあります。
TOB発表後に一般投資家が買い増すケース
TOB発表後、公開買付価格と市場価格の差に着目して株式を購入する取引もあります。また、対抗TOBや買付価格の引き上げを予想して購入するケースもあります。
しかし、TOBは必ず成立するとは限りません。下限未達、不測の事情による条件変更・撤回、対抗提案の不成立などによって株価が大きく下落する可能性もあります。特にTOB価格より高い市場価格での買い増しは、期待していた価格引き上げが起きなかった場合の損失リスクがあります。
本記事は制度や仕組みを説明するものであり、特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。
そして見落としやすいのが、TOBで得た利益の「税金」です。通常の市場売却と同じ扱いになる場合だけでなく、自社株TOBでは「みなし配当」が発生することもあります。確定申告の判断ポイントを次ページで整理します。




